会長挨拶
▏会長挨拶
平和教育の地平を広げ、平和な未来を創造しよう
この度、日本平和教育学会の設立にあたり、初代会長の重責を担うこととなりました村上登司文です。
今私たちは、歴史の大きな転換点に立っています。国際社会における対立の激化、絶えない紛争、そして分断が進む社会情勢の中で、「平和」の重みがかつてないほど増しています。混迷の時代にあっても、教育には戦争を防ぎ平和を創る力があると、信じています。平和を単なる「願望」に留めるのではなく、いかにして具体的な「現実」として構築していくか、教育がその基盤をなしています。
しかし、平和に向けた教育を支える理論と、実践で得た知見とを共有するネットワークは、未だ十分とは言えません。本学会が、研究者、教育者、生徒や学生、そして平和を願うすべての市民にとって、真剣に学び合い、知恵を出し合う「開かれたプラットフォーム」となることを願っております。本学会は、これまで積み上げられてきた平和のための教育理論と実践を、一つの独立した学問分野、すなわち平和教育学として体系化し、発展させることを目的とします。
平和教育を、学校教育や社会教育における平和題材に関する知識の習得と、平和的態度や技能の形成と規定します。戦争のない直接的平和のみの教育に留めず、構造的・文化的な平和も含めながら、平和を積極的に形成していく、という視点で捉えます。つまり、戦争体験の記憶を継承しつつも、社会に対する批判的考察力を高め、市民として平和な社会の形成に参与できる実践的市民性を形成する教育を含む営みです。
1980年あたりから日本で平和教育学の必要性が説かれ始め、平和学の1つの分野として平和教育学が想定されました。2005年に東京で「平和教育学研究会」がつくられ、研究会としての平和教育学の研究が始まりました。平和教育学研究会により『平和教育学事典』 が編集され、web版でも2017年より発信されています。平和教育の国際シンポジウム「戦後80年、これまでとこれからの平和教育を考える国際対話」 が2025年9月に広島で開催されました。2025年12月4日に、広島大学で開かれた設立総会により、日本平和教育学会が設立されました。
私たちは、以下の3つの目標を掲げ、歩みを進めてまいります。
学問分野としての「平和教育学」の確立
教育学のみならず、平和学、心理学、社会学、哲学、国際政治学といった諸学問を横断的に結びつけて多角的な視点から、平和を創出するための確かな理論的基盤を構築します。
平和を創る「次世代」の育成と支援
若い研究者や教育実践者が、平和を構想し研究できる場を提供します。次世代が直面する現代的課題に対し、学問の側から真摯に応答していくことは、私たちの責任です。次世代を担う研究者や実践者を支えるとともに、国内外の諸機関と連携し、国境を越えた平和への道筋を探ります。
理論と実践のダイナミズム
教室での実践、地域での活動、そして政策提言を進めていきます。それらの現場から得られる知見と理論を往還させることで、平和な社会へと変革する実効性のある平和教育を追究します。学校教育、社会教育、地域活動、国際協力といった多様な現場の実践知を集積し、理論化を進めます。
本学会が、多様な専門性を持つ研究者、日々の現場で奮闘する教育者、そして未来を拓く若者たちが集い、英知を寄せ合うプラットフォームとなることを願っています。学問として誠実で謙虚であること、平和を希求する情熱を胸に、皆様と共に新たな平和教育学の地平を拓いてまいります。皆様の積極的なご参加と、温かいご支援を心よりお願い申し上げます。
2026年1月
日本平和教育学会 会長 村上登司文